１月２１日１７：００開演（千秋楽）
新年早々「今年は厄年かぁ！！」と絶叫したくなるような代物をうっかり観てしまい、
厄落としのために行ってきました「シラノ・ザ・ミュージカル」。主演があの市村正親さん
というだけではなく、 セーラームーンミュージカルの元常駐悪役役者、笠原竜司さん
ご出演、おまけに訳詞が青井陽治さんとくれば興味は有ったんですが、 前売りでは
金銭面的理由からチケットがとれなく良い席はもう不可能っぽかったんで諦めては
いたんですが…。実は上記の代物、どうのこうのと言って千秋楽は役者さんの爆走大会に
なるんで当日券で行くか行かぬかかなり悩んで結局「お金がない」とあきらめたんですが。
実は有ったんです。財布の中に、丁度それに行って帰ってくるだけの金額が。幾度も
財布を開けていたのにそれに気付かなかったとは…。これはシラノの当日券、席が
悪くても取って観に行けという天啓だと感じ、ついでにネットの「チケット譲ります」を
覗いたところ、有ったじゃないですか。「千秋楽譲ります」の掲示が…。おまけに
１３列２９番！！速攻譲っていただきました。 譲って下さった方、有り難うございました。
感想は一言、「面白かった」。
舞台は最初っから幕が開いていて、舞台装置が丸見え。うねった紙のイメージで山や谷が
できている 舞台に釣られた巨大な羽根ペン！！ 四季の「ジーザズ・クライスト・スーパースター
エルサレム・バージョン」の急勾配舞台にもびっくりしたけれどこれにも驚いた！
ただ、前の方の一部の席だと紙のうねりの為、舞台がほとんど見えないようでした。
宣伝で豪華だ豪華だと騒がれていた衣装、豪華いわれて浮かんだ華々しい雰囲気より
重厚で暗い印象の豪奢さを感じました。 最初の「オペラ オペラ！」で貴族がぞろぞろと
出てきた時なんて「綺麗〜！」ではなく「あの衣装、いったい何キロ？？」と思って
しまったくらい。 布地もたっぷりふんだんに惜しげもなく使ってあるし細工も凝って
いるしで正に特権階級にふさわしい扮装。
さて我らが主人公シラノ君ですが…。ひね者で乱暴者、誇り高き詩人にして向こう見ずな
腕っ節の強い剣士。登場シーンからして一筋縄ではいかないってのはよく分かります。
役者が気に食わぬというだけで舞台をぶっつぶす。そしてその時役者を罵る言葉も
まあよくもこれだけ思いつくものだと感心するくらい色とりどり 。 シラノが舞台を
荒らしている向こうで目をむいているロクサーヌが気の毒でした。その後の決闘でも
相手に鼻をからかわれてそのお返しとばかりに切り結びながら自分の鼻に関して
「鼻」という単語をつかわずに滔々と語る所とかもよくもまあこれだけ言えるものだと
感心してしまいます。 一発では到底覚えられないんでＣＤ出てくれないかなぁ。
歌詞をパンフに掲載するんでもいいから。そしてよくこれだけ立ち回りをしながら
これだけ台詞を言えるとは流石にベテラン、市村さん。
この決闘シーン、市村シラノと切り結ぶのは笠原竜司さん扮するヴァルベール。流石に
ＪＡＣ出身だけあって笠原さんの動きは格好いい。市村さんも動けるから見応えあるある！
二人とも舞台をすみずみまで上って下って駆け回り、野次馬共（こいつらきゃーきゃー
騒いで逃げ回ってホント楽しそうなのよ） 蹴散らして切った張ったの大乱闘。
（といってもシラノがほとんど押してますけれど）強烈な斬撃を交わした後、
先ずヴァルベールが「いててててっ！」と手を振ってその後「ふふん♪」と構えていた
シラノも実は手にしびれが来ていてこそっと「いてててっ！」と手を振ってたりなど
お笑いも入っていて飽きのこない一戦でした。しかし、この一戦、ヴァルベールが
自業自得とはいえ鼻を切られて終わるんだよなぁ…。シラノ…恨み買いまくって
あたりまえだわ…。
音楽も良いんですよね。私のお気に入りはパン屋のラグノーさんのむちゃくちゃな
レシピ歌。最初の方はまともなんだけど最後は「一寸待てぃ。一体何をアップルパイに
入れているんじゃ！」となる陽気な歌。職人さん達も突っ込みまくりで大笑いです。
ついでにラグノー亭のウェィトレスさん達、衣装がセクシーなのよね。 胸元が結構
がぱっと開いていて 。後は
シラノ：「恋して君はジュリエット、でも僕はロミオじゃない。」
クリスチャン：「恋して君はジュリエット、でも僕はシェイクスピアじゃない。」
とハモって歌う歌でしょうか。
印象に残ったシーンはクリスチャンの代わりにロクサーヌに愛の歌を歌い上げるシラノ。
闇に隠れて、他人の顔を借りないと告白ができないシラノに、そしてその後ろで
シラノの本心を知る由もなくロクサーヌに思いを馳せてそわそわしているクリスチャンに
なにかジーンときました。滑稽とか哀れとかそこら辺に近いような違うような、そんな感じで。
あとはスペイン軍に包囲された陣で、食料もつき、死ぬならせめて討ち死にしたい。
そんなに思い詰めた状況でやっと出撃かと思い喜んだとたん、陣地死守を申しつけられた
シラノの連隊が意気消沈するところ。実は二幕目、笠原竜司後援会のｕｍｉさんが
席を代わってくれて最前列だったんですが、目の前にいる隊員が背を丸め、膝を抱えて
座り込んで指を噛んで嗚咽しているんですよ。もろにすすり泣く声とかが聞こえてきて
こっちまで一緒に泣きかけでした。こんな悲惨な状態だからロクサーヌが救援物資と共に包囲を
突破してクリスチャンに会いに来た後のどんちゃん騒ぎに変わるのがほっとなるんですよね。
そしてそこのナンバーの終わり、笠原さん扮する隊員が心底神に感謝を捧げている
ような（この時代、この地方の人間なら多分感謝の捧げ先は神でしょう）くしゃくしゃの
笑い泣きのような顔をしているのが心に残っています。
ちなみに最前列の席、けっこう笠原さんシフトだったんですよね。スペイン軍の敵襲の場面
で、
爆風で飛ばされた仲間に「畜生！」と叫びながら走り寄るところはほぼ目の真ん前でした。
最前列、舞台全体を見渡すにはちょっとしんどいですが、こういった後ろだと聞こえてこない
一寸した台詞（あのすすり泣きとか）が耳に入ってくるんでやっぱいいなぁ。（＾＾）
ｕｍｉさん有り難う。ｍ（＿＿）ｍ そーいや戦闘シーンも煙の匂いがあっという間に
届いたなぁ。爆音も凄くて初めて爆発起こったとき椅子から跳ね上がりました。
ついでに言えば、あともう一寸角度が違えばシラノの付け鼻、もらえたのになぁ。私の右手に
座っていた男性が市村さんがカーテンコールで客席に投げた鼻を受け止めてました。
カーテンコールですが、スタンディングオベーションでした。役者さん達がお辞儀した後、
市村さんがおもむろにオケピを覗いたら空。そして舞台の袖からオーケストラのメンバーが。
雪がばっと降った後、市村さんがスケートのまね。去年、「君はいい人、チャーリー・ブラウン」で
スヌーピーな市村さんを観たのと、すでに付け鼻をはずしてしまっているのとでスヌーピーの
スケートに見えてしまいました。そして一番最後にはクリスチャンとロクサーヌ「をエスコートして」
もしくは「にエスコートされて」舞台からシラノは去って行きました。