「撮影中の事故により主役：ブランドン・リー死亡」

耳を疑いました。と同時に「こりゃ映画の公開はないな…。」 という考えも頭の中を
横切って行きました。しかしながらそれからしばらくして、テレビで、どう考えたってブランドンの
死亡事故が元になったと思われる映画撮影中の不幸な大事故とそれによってその映画がどういった運命を
たどるか、という特集があり「クロウ」の関係者が「クロウ」は公開される、と取れる発言をしたのです。
そして撮影が終わっていない所は吹き替え＆ＳＦＸ技術を上手に利用して映画は完成、そして公開されました。

結局、公開自体がかなり遅れたため観たのは日本で公開されてからでした。その時点では他に
はまっていた物があったのでかなり興味は薄れ、最初から「クロウ」を観よう！と思って映画館に
行ったわけではなく、友人のkaoruちゃんと遊びに行ったついでに観たんです。そうしたら泣きました。
思った以上に感動しました。正直言って、原作を立ち読みしたときには読了後、頭の上に暗雲たれこめるような
気分だったんですが（だから原作は買わなかった。今となってはかーなーり後悔（＾＾；））映画の方は
それより一寸明るい感じがして実は映画の方が気に入っていたりします。
どんなお話かといいますと−

とあるハロウィンの夜。ハロウィンになると放火が多発する大都市で結婚を翌日に控えた
エリックとシェリーが惨殺される。犯人が捕まらないまま一年がたったハロウィンの前日。
エリックの埋葬されている墓の上に一羽の烏(Crow・クロウ)が舞い降りた。その烏に導かれ
エリックは不死身の体を持って黄泉帰る。この世に残した心残りを片付けるために…。

映画が始まった瞬間、原作が 持っていたのと同じような色調の画面に感動。が、とにかく暗く、
後でビデオで見直した時、「く、暗すぎ…。よう見えん…。」というシーンが
多々ありましたが…。そしてその画面をより強調するようなBGM。挿入歌"The Cure"と
エンディングの"It Can't Rain All The Time"は心に強く残ります。曲も使い方が上手なんですよね。
"The Cure"はエリック・ドレイヴンが墓場から黄泉返って自分の部屋で白地に黒の道化化粧を
するまでに使われ、"It Can't Rain All The Time"はタイトル通り、エンディングで初めて
雨か曇り以外の貌をみせる夜明けの街の空をバックにかかるし。監督がMTVやCMをよく撮って
いただけあるなって所でしょうか。実際、一部だけみるとMTVのクリップかと思うような所も多いし。

雑誌「宇宙船」にはMTV的な映像＆編集の為、主人公に感情移入できなかったという評が
あったんですが、私にはMTV的だからこそかえって主人公に対して感情移入できました。
薄汚れて荒廃した街を冷たく綺麗に撮ってそれにハードロックをからめる。これにエリックの
鬼気迫る表情がかぶさって絶望が強く感じられました。MTV的な映像の薄さ鋭角さと冷たさが
この街全体からみたエリックの死の軽さが伝わってくるようで。だからこそ復讐はエリックが
自分自身の魂を救う為には必要な行動と思えて。これはやっぱり私がMTV世代だからかな？
（中高と流行物をバカにしながらMTVは結構観てました…。）

エリックのキャラクターも黄泉帰ってからも復讐に燃えるだけでなく、その無意味さがわかって
いるようなところが涙を誘います。相手を追いつめた時、誰かに見られた時、おどけてみせたり妙に
カッコつけてみたり、わざと相手に自分を傷をつけさせて苦しんでる振りをしてみたり。
一回死んでから恋人のいない世界で不死身になってもつらいだけですよね。彼が復讐することで
安らかに眠ることができると知っているなんて映画の中では一回も言ってないような
気がするんです、考えてみると。

そして復讐だけでなく生前友達だった少女・サラことも気にかける所も良いです。麻薬と男に
溺れるサラの母親を諭して（脅してとも…）自分がサラにとってどんなに重要な存在かを
気付かせるシーンがあるからこそ最後に素直に感動できるんですよ。単なる復讐鬼じゃないからこそ
最後の雨の中の戦いで道化の化粧がほとんど落ちて、素顔に戻ったエリックが永遠の眠りに
着こうとするとき、シェリーが迎えに来てくれたのが嬉しかったです。

視覚効果から言うと、衣装もセンス良し。エリックのボディラインがくっきり出る黒の薄手
長袖シャツに黒の（多分レザー）ズボンに編み上げブーツ（靴ひもは足首の所までしか結んでない）。
ブランドン・リーの手足の長くひきしまった体型が良く映えます。そして街のボス・トップダラーと
その腹心・グランジはとにかくダンディ。他の部下やちんぴらが見るからにやくざな
衣装なのに対して格の違いをみせつけんばかりに決めてます。グランジなんて名前が「汚い」な癖に、
パリっとしたグレー系の渋いスーツにお洒落な眼鏡、外出時には帽子付き。トップダラーが
最後の方で着ている衣装なんて「あんた時代物の悪党？」みたいな膝までの黒ブーツ、黒ズボン、
袖に余裕を持たせた白のシャツに黒ベスト。そしてトドメは黒手袋！！これに日本刀を
背負ってたりしますからね。おまけに役者さんが狼タイプの悪党面に細身なんで似合いすぎ。
エリックとシェリーの小さなお友達、サラちゃんはとにかくキュート。（具体的に言っていたら
これこそ終わりがないので省略）ぼこっと大きな上着を引っかけてスケボー乗っているのがナイス。
トンボ玉や大粒ビーズを繋げたネックレスを２，３本つけてチョーカを一本つけた所が
良いアクセント。そしてエリックと色々関わり合いになる警官アルブレヒトさんは見るからに
冴えない人の良いおっちゃんな格好しているのが周囲の格好が周囲だけに目立ちます。

色々な意味でオススメな一本です。ただし、ビデオ鑑賞するときは
（あんまりにも画面が暗いので）プロジェクターとか大画面テレビで
観ることをオススメします。（笑）

余談１：後でビデオで見直してみたら爆笑してしまったのがエリックがサラの前に復活後
初めて出現するシーン。まずカッコ付けた影がエリックの部屋から立ち去ろうとしたサラの
後ろ姿に被り、サラが振り向くとその格好したエリックが。カッコつけすぎ…。

余談２：これのテレビシリーズができたそうですが。主人公はエリックだそうですが。
が
なぜエリックが法で裁けぬ悪に泣く人々を救わにゃシェリーとあの世で幸せになれないんじゃ？！
なぜあんなに映画では効果的に使われていた道化の化粧が
「悪に対する怒りが頂点に達したときに浮かび上がる」
代物にならにゃいかんのじゃ？！
私的には「クロウ」という作品が他のアメコミヒーローより魅力的だったのは他人の為ではなく
あくまでも自分の為に行動してその結果、他人を救うこともして、最後安らぎを得る所だったのに〜。
（；＿；）観たら最後憤激してしまいそうでまだ観る勇気はでてませんが、観た友人の評は
「ヒーロー物としては良い出来だよ〜。「クロウ」である必然性はないけどね〜〜。」
…出来は置いておいて私がもしテレビシリーズを観たら絶対につく事が
決まったような評の一文
「クロウってついてなきゃーねー。」